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 鼻水やたんが少なく、乾いたせきが長く続く「マイコプラズマ感染症」。病原微生物である「マイコプラズマ」によって引き起こされます。薬が効きづらい耐性菌も多く、迅速に正確に診断することが難しいのが実情です。感染力はウイルス性の感染症ほど強くはないものの流行することもあります。マイコプラズマ感染症の特徴や症状について、帯広厚生病院小児科主任部長・植竹公明先生の協力でまとめました。

多くは軽症で自然治癒
 マイコプラズマは自己増殖が可能な最小の微生物で、生物学的には細菌に分類されます。喉より下の気管・気管支にいる毛のようなものを持つ細胞「繊毛(せんも
う)上皮」に感染し増殖を始めます。ほとんどが飛沫(ひまつ)感染です。潜伏期間は2~3週間で、初期症状は発熱や頭痛、倦怠(けんたい)感、咽頭痛、せきなど
風邪に似た症状が現れます。熱が下がってもせきが3~4週間程度続くのが特徴で、多くの場合は軽症で自然治癒します。マイコプラズマに含まれる物質が免疫細胞を過剰に刺激して、一部は肺炎となり重症化することもあります。

子供や若い人の肺炎の原因として多く
 診断にあたっては、血液検査や喉をぬぐって検査したりしますが、マイコプラズマによるものか正確に結果が出るまでには時間を要します。迅速に検査するキットもありますが、偽陰性のことも多く、正確な結果を得るためには十分ではありません。子供や若い人の肺炎の原因として比較的多いのがマイコプラズマですが、肺炎を発症しても全身の状態はそれほど悪くなく、聴診器で胸の音を聞いても異常がないのにレントゲン検査をすると肺が真っ白な影になっていることも多いです。肺炎以外にも中耳炎や下痢など消化器の症状が出ることがあり、まれに髄膜炎や肝炎など重症化することもあります。

抗生物質が効きにくい耐性菌も
 一般的な細菌には外側に膜のような壁がありますが、マイコプラズマにはこの壁がありません。ペニシリンやセフェム系の抗生物質は、細胞の壁を壊すことで細菌を殺す作用があります。ですから壁のないマイコプラズマに対しては全く効果がありません。マイコプラズマに対しては、マクロライド系の抗生剤は有効ですが、最近は耐性を持つ菌が現れており、正確な報告はありませんが、マイコプラズマ全体のうち3~5割は、マクロライド耐性菌と推測されています。

手洗いとうがい、マスクで予防を
 ただ、耐性菌は増殖力が劣るため、マクロライド耐性菌に感染しても通常の菌よりも発熱期間が2日ほど長引く程度で、現状では重症化する傾向は報告されていないそうです。日本小児科学会と日本マイコプラズマ学会は、マイコプラズマ肺炎の治療として、最初はマクロライド系抗生剤の使用を薦めています。投与後2~3日以内に解熱傾向がなければ、次の治療法を考えるということになっています。
 治療は、基本的に対症療法が中心となります。しっかりと栄養を取って体力を付けるようにします。予防法は、手洗いとうがいの徹底となります。

取材協力=帯広厚生病院小児科主任部長:植竹公明先生
この特集記事は十勝の生活応援マガジン「Chai」に掲載された「Chai子供の健康」を再編集したものです。
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