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「みんなで育てる」=孤立育児は不自然なこと

 ヒトは「共同養育」による子育て戦略を進化の過程で選択しました。子どもを産んだお母さんだけではなく、集団の仲間が共同で子育てをする。これによって、お母さんは短期間にたくさんの子を産むことができ、集団でその子どもたちを育てることにより、最大限子孫を残すことができる、という生存戦略です。  私が子どもの頃、50年ほど前までは、祖父母や兄弟姉妹、あるいは地域の所属集団など、子どもの面倒を共同で見るということが当たり前にありました。子育て環境が劇的に変化したのは、ここ100年くらいのことだと言われます。何百万年という長い歳月をかけて環境に適応しながら、今ある心と体を獲得したにもかかわらず、お母さんのみに極端に負担が集中する現代の子育て事情は、あまりに急激な環境変化といえます。  さらにコロナ禍には、孤独で不安な育児は一層深刻化しています。ワンオペ、アウエー育児の割合が7割とも8割ともいわれる今日、「孤立育児は不自然なこと」だという認識を、より広く社会的なコンセンサスにして課題解決に向かう必要があるのではないでしょうか。  そこで、私は現代版の「新しい共同養育のシステム」として、できることは何でもやってみる価値があると考えています。ぷれいおん・とかちでは、子どもを真ん中に、多世代で取り組む遊びや体験の場を創り出しています。活動を通じて、誰もが安心できる心地よい居場所ができたり、多世代の多様な価値観を持つ人たちと交流できることが、みんなで子育てをする関係性を築いていきます。  また、ファミリーサポートセンター事業では、子どもを安心して預けられる市民の方をご紹介し、緩やかに支え合えるつながりをつくるお手伝いをしています。  今年3月に帯広大谷短大と共同で行った十勝在住の未就学の子どもを持つ保護者への調査では、子どもの預かり先がない家庭や、子育ての相談先として、園の先生の他には配偶者や血縁、知人などが大半を占めていることなども明らかになりました。地域のたくさんの人の輪の中で、大らかに、「みんなで育つ」環境をどのように実現していくか。ご近所づきあいが失われた先にも、やはり子どもを真ん中に安心できるつながりが必要なのです。目を向ければ、あなたもきっと誰かの力になれるはずですよ。 今村江穂(いまむら・みずほ) 1967年、北九州市生まれ。97年に帯広市に転入。 2003年~前身帯広西おやこ劇場の運営委員長を経て、2006年NPO法人子どもと文化のひろばぷれいおん・とかちを設立、理事長に就任。 こどもの遊びや体験活動、子育て支援など、子育ち親育ち環境の充実をめざして多世代で活動中。 2013年~帯広市ファミリーサポートセンター事業受託。 こども環境学会認定こども環境アドバイザーも務める。 22歳から29歳までの1男2女の母。 十勝管内芽室町在住。

今村江穂
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