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 腹痛や腹部の不快感、下痢などの症状を繰り返す「過敏性腸症候群」。機能性胃腸障害の一つですが、検査をしても特に問題がないものの慢性的に症状を繰り返します。心理的・社会的なストレスが大きく影響しています。帯広厚生病院小児科主任部長・植竹公明先生の協力でまとめました。

頻繁に腹痛や腹部不快感
 過敏性腸症候群(IBS)とは、国際的診断基準で「腹痛あるいは腹部の不快感が1カ月に3回以上ありそれが3カ月以上続き、腹痛や腹部不快感が①排便によって軽快する②排便頻度の変化で始まる③便性状(便の状態)の変化で始まる、のうち2つ以上の症状を伴うもの」とされています。国内の推定有病率は、小学生で1~2%、中学1・2年生で2~3%、中学3年生・高校1年生で5~6%、高校3年生で9%という研究結果もあります。 腹痛を繰り返す症状では「反復性腹痛」(RAP)があります。これは「最近3カ月以上にわたり少なくとも3回以上、日常生活に支障をきたす腹部の痛み」です。RAPの半数が自然に治り25%がIBSに移行するとされています。

患者の子供は不安と苦痛が大きく
 IBSは4つのタイプに分けられます。①へその周りを中心に頻繁に腹痛を訴え、起床後に腹痛が強く午後には自然に治まることが多い「RAP型」、②下剤を使わないと便意がまったくない、頻繁に便意はあるが排便できない「便秘型」、③起床後すぐに腹部不快感や腹痛、便意が始まり、頻繁にトイレに行き軟便から下痢になる「下痢型」、④おならやおなかが鳴る、おなかの張りなどの症状が恐怖や苦痛になり、特に静かな教室で症状が強くなる「ガス型」。下痢型は子どもにとって朝が苦痛の時間となり、ガス型の一部は軽快せずに精神疾患を合併することもあります。
 IBSは、血液や便、尿などさまざまな検査をしても特に異常はありません。原因として受験、学校生活、家庭内での不安やストレス、公共交通機関での長時間の通学など心理的・社会的要因が挙げられます。登校前に症状が出やすくトイレにこもったり、通学中に腹痛や便意が出てくるのではないかなどと常に不安と苦痛を感じています。さらに、過度に登校を促されるとストレスとなり症状が悪化する場合もあるので、周囲の大人は慎重に対応することが大切です。

保護者や学校関係者ら、病気の理解と連携が重要
 一般的な治療は、まず、患者と保護者は、医師と相談しながら命にかかわるような病気ではないことを理解し、IBSに適した食事、規則正しい生活への改善、適度な運動、朝は余裕を持って起床し食事をする。登校前にトイレへ行く時間を十分に取れるようにするなどが中心となります。症状が強く日常生活に支障が出ている場合などは薬が処方されることもあります。
 食事療法は一般的に、繊維質の多い食品、低脂肪食、乳酸菌・ビフィズス菌を含む食品が推奨されています。逆に症状を増悪させる可能性のある食品は、香辛料、炭酸飲料、カフェインを含む飲料などで、乳糖の大量摂取も腸管に刺激を与えて症状が悪化する場合があります。IBSタイプ別に特に控えたほうが良い食品は、RAP型・下痢型は乳製品や冷たい物、カフェイン、高脂肪食。ガス型はガスがたまりやすい野菜(タマネギやイモ類など)、果物、炭酸飲料、ガムなどです。便秘型は水分や繊維の多い食品がお薦めです。
 IBSは、検査をしても異常がないことから、仮病や怠けと思われることがあります。心理的ストレスがどこにあるのかを探り、痛みを理解してあげ、教室ではトイレに行きやすい環境になるよう配慮するなど、医療機関、家族と学校が連携して対応することが症状改善へ重要となることもあります。


取材協力=帯広厚生病院小児科主任部長:植竹公明先生
この特集記事は十勝の生活応援マガジン「Chai」に掲載された「Chai子供の健康」を再編集したものです。
Chai電子書籍版はこちら:https://www.catapoke.com/viewer/?open=66d6a

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