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【Motto かちまい 包括連携協定~札医大の研究室から(45)】
 新型コロナウイルス感染拡大により家庭内で過ごす時間が増えたことで、親子のストレス増大が懸念されている。オーストラリア発の「前向き子育てプログラム(Positive Parenting Program、トリプルP)」の普及・研究に取り組む札幌医科大学の澤田いずみ准教授(精神看護学)に、親が心掛けてほしいことなどを聞いた。
(聞き手・安藤有紀)
【2020年07月04日付十勝毎日新聞に掲載】

/コロナ禍で増加/

 -自粛期間が家庭内に及ぼした影響は。

 厚労省によると1~3月の児童虐待対応件数が1~2割増、札幌市児童相談所への3月の通告件数は1・5倍に増えた。子どもは自宅で何をしてよいか分からずイライラしてかんしゃくを起こしやすくなる、親へ反抗的になる。親もイライラが募り今まで以上に厳しく叱り、子どもはさらに反抗的になる。この悪循環が繰り返されると親も子どもも自尊感情が低下し、無気力、抑うつを引き起こしてしまう。子どもと長時間一緒にいるとイライラする、休業中の夫からの暴力などの相談は実際に増えている。

/子どもの努力知る/

 -トラブル予防策は。

 トリプルPでは、前向き子育てに必要な5原則を(1)安全な環境づくり(2)積極的に学べる環境づくり(3)一貫した分かりやすいしつけ(4)適切な期待感(5)親としての自分を大切にする-とし、これを実現するための技術を提唱している。ポイントは、子どもと親自身のできていることに目を向けること。

 例えば、イヤイヤ期を迎えた子どもには、良い行動を具体的な言葉で褒める、スキンシップをする。小学生なら1日の過ごし方を一緒に考えるのもよい。ゲームの使い方などを家族で話し合う際は、親の要求を通すのでなく平等に話し合える雰囲気づくりを。中高生は冷静に話を聞き、子どもが自分の気持ちを整理できるような対話を心掛けてほしい。

 自粛生活の中で子どもが我慢し、努力していることはたくさんある。それに親が気付いていることを伝えてほしい。学校が再開し、疲れや不安を感じる子もいるはず。いつもと違う行動がないか気を配り、日ごろから子どもと話し合える関係をつくっておくことが大切。

/助けと休みを得る/

 -親自身のストレスとの付き合い方は。

 親も経験したことのない事態で、いつも通りにできないのは当然。親としての自分を今まで以上に大切にしてほしい。どうにもできなくなったときの対処法を考えておくのもお薦め。深呼吸やヨガ、歌、友人との会話、好きな俳優や美しいものの写真を見るなど。どうしても感情的になるときは、10分程度休憩をとって一人で過ごすのもよい。仕事や経済面の悩みなども一人で抱え込まず、相談機関を利用するなど助けを求めるスキルを身に付けてほしい。

 -十勝住民へ一言。

 十勝は豊かな自然と地域住民の助け合いを有し、全国に先駆けて精神保健福祉の先駆的活動を進めてきた。コロナ禍の危機を乗り越えるモデルとして全国・世界に発信してもらいたい。トリプルPジャパンのホームページに保護者向けガイドも掲載しているので役立ててもらえれば。

<さわだ・いずみ>
 函館市出身。札幌医科大学衛生短期大学部看護学科卒、千葉大学大学院看護学研究科修士課程。北海道大学大学院医学研究科公衆衛生分野博士課程修了。2006年より現職。NPО法人「トリプルPジャパン」の理事も務める。

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