今年、出産以来の入院生活を経験しました。 痛みのせいで横になるように食事をしていた私。 誰かに見られたら「ちゃんと座って食べなさい」って言われちゃうかな…?そんな思いが頭をよぎりました。 子育ての現場でも、つい口にしてしまう「ちゃんと」「きちんと」という言葉。 実はとても抽象的で、子どもには、どんな行動を求められているのかが分かりにくく、伝わりにくい言葉でもあります。 たとえば「ちゃんと座りなさい」よりも「背筋を伸ばして座ろうね」、 「きちんと食べなさい」よりも「一口ずつよくかんで食べようね」と伝えると、 何をどうすればいいのかが明確になり、子どもも理解しやすくなります。 そしてもう一つ。 今回の私のように、「ちゃんとしたくてもできない」こともあります。 「できない」の陰には、痛みや疲れ、怖さ、緊張…そして、からだの発達や筋力のバランスなど、その子なりの理由が隠れていることもあるのかもしれません。 それは、努力していないからではなく、いまのその子のからだとこころの状態がそうであるだけ。 「ちゃんと」の前に、「どうして今は難しいのかな?」と、ひと呼吸おいて思いを巡らせてみる。 心を寄せてみることが、お子さんにとって「ちゃんと見てくれている」という大きな安心につながっていくのだと思います。 今日も、それぞれのペースで「いま」を生きる私たち。 一人ひとりの「今の姿」を、やさしく見つめていけたらいいですね。 池田はつみ/タッチケアセラピスト・保育士 士幌町出身、帯広市在住。 2011年より、親子の心とからだに寄り添うタッチケアの活動を始めました。 これまで延べ5,000組以上の親子や、発達・医療的ケアが必要な子どもたちと出会い、 その一人ひとりにふれてきた経験は、私の宝物です。 2022年に立ち上げた「音の森.」では、ベビーマッサージや感覚あそび、ママのセルフケアなどを通じて「ふれるって、こんなにやさしくて、力強いんだ」と感じられる時間を届けています。 わたしの願いは、 「自分に生まれてきてよかった」と、親も子も心から思える子育ての時間を増やすこと。 ふれあいの中にある、小さな安心と大きな愛を、これからも伝えていきたいと思っています。