とかち子育て応援ラボ

とかちの子育て世代を応援する!Webマガジン【毎日更新中!】

TOPICS

6108view
214good

わたしの父はもう亡くなってしまいましたが、闘病生活中の3ヵ月間、朝から晩まで父のそばで過ごせる時間をもらえました。
薬の強い副作用で幻覚や記憶障害がみられましたが、父は自分がかかわってきた人たちを忘れることはありませんでした。

ある日、大事な息子の嫁が来た(らしい)
「いすを出してやってくれ」と、私に言う父。
またある日、父の昔からの友人が来た(らしい)
「お茶を出してやってくれ、あたたかいお茶を」と、わたしに言う父。
またある日、自分の布団の上に虫が出た(らしい)
「そうじの人をよんでくれ」と、わたしに。

父にしか見えない世界の中でも、わたしだけは本物で、本当の姿でいられました。
もどかしい思いや、病気での痛みや苦しい気持ちをわたしにぶつけ、
こうしたい、ああしたい、こうありたいという思いをわたしに伝えつづけ、
わたしたちはありがたいことにずっと親子でした。

ある頃、もう自分の力では起き上がる体力もなく、どんどん増す痛みで気力も落ちてきた日、一番強い薬を打ちました。

するとね、信じられないけど父は笑顔で起き上がり、車いすにのせてもらい、目の前に出された(らしい)おいなりさんをわたしにくれました。
「ゆっこ、先に食え」「ほら、うまそうだぞ」と父。

きっと父はずっとこうして育ててきてくれたんだろうなぁ、と思いました。
わたしという存在を認めてくれて
おいしいものをいちばんにくれる。
いつもどんなときも、「わたし」を忘れない。

この記事に「good!」と思ったら押してください

214good

このページをシェアして友達に教えよう!
http://tokolabo.jp/tp_detail.php?id=526

関連トピックス:コラム

  • 情報投稿ポスト
  • じゃらら
  • 帯広葵学園
  • 十勝毎日新聞電子版

人気記事ランキング

  • 時間
  • 日間
  • 週間
  • 月間
  1. ホーム
  2. コラム
  3. わたしの父の子育て