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 乳幼児精神保健分野の第一人者で、小児科医の渡辺久子氏の講演会が1日、帯広市民文化ホールで開かれた。保育関係者でつくる「子どもランド・おびひろ」の主催。「子どもを伸ばす家庭の力」をテーマにした講演要旨を紹介する。
(丹羽恭太)
【2016年10月9日付十勝毎日新聞に掲載】
※文中の年齢や肩書き等は掲載当時のものです。


父母関係を健やかに メリハリある一家だんらんを



/母1人で無理しない/
 日本では家族の力が落ち、お母さんに育児の負担が集中している。赤ちゃんはお母さんだけでは育たず、お母さんがハッピーで、周囲に応援されているときに育児はうまくいく。何でも器用で完璧なお母さんも、1人で無理をしてはだめ。困ったときに周りが手を差し伸べなくなるから。お母さんはまったりして、良い加減でないと
【写真説明】甘えさせて子どもを育てる大切さを説く渡辺氏


 お父さんがエリートの家庭も、子どもの心に関してはハイリスクだと言いたい。そういう家庭はお父さんが帰宅したとたんにお母さんが緊張し、笑い声も泣き声もしない家になる。ビジネスの原理は命の原理には通用しない。

 人間のお母さんには、赤ちゃんを産んだ後に外敵から身を守る力がない。外敵に対してはお父さんや社会の父性が必要だ。お父さん不在はお母さんを不安にさせる。逆に、出産したその日1日でもいいのでお父さんが一緒にいれば、お母さんの気持ちは柔らかくなる。夫婦の絆が深まり、どんなに病弱な子どもでも、一緒に育てるとなればお母さんには怖い物なしだ。

 昔もお父さんは育児休暇を取れなかったが、近所にはおじさん、おばさんがいた。母子を包む人間関係がオーケストラのように存在した。核家族化でそれがなくなった今、せめてお父さんは一緒にいてもらいたい。お父さんにはもっと声を上げてもらいたい。

/3歳まではワクワク/

 生まれたときの人間の脳は生き物の中では最も未熟で、その後の環境の刺激で発達する。特に3歳まではワクワクすることが脳にとって大事で、我慢させるとストレスホルモンで脳の発達がゆがむ。特に意欲系がやられ、無気力な人になってしまう。

 1、2歳の子どもは怒りや嫉妬、恨み、嘆きなどを全部出すことによって、人生の悲哀や傷付きに対する免疫ができていく。お母さんの下で泣いたりわめいたりし切った子どもは対人関係が強くなり、それがないお利口さんは失敗を恐れる人になる。

/失敗したら慰める/

 日本人は風土が人をつくることを知っている。日本は本来「お互いさま」で「ぼろを出し合う」オープンな風土。失敗しても一緒に頑張ろうということが大事だ。人間が発達するとき、つまり自分に自信を持つために大事なのは100点を取ることではない。失敗したときに慰め、「私もそうだよ」と言ってくれることこそ、心の生育に必要だ。子どもが私たちの膝元にいるうちに、失敗し内省し、またチャレンジするということをやってほしい。

 子どもの自尊感情を育むのは健やかな父母関係。健やかな父母関係というのは、お母さんの瞳の奥でお父さんがにっこり笑っているようなイメージだ。そうすると、女の子はお母さんのような幸せな結婚をしようと思う。男の子は、お母さんの瞳の奥にいるのが自分じゃないと思うと、お父さんをさりげなくまねて、お母さんのようなすてきな女の子に出会おうとする。

 子どもが子どもらしくワクワクできる、あるいはでれっとできる、メリハリのある一家だんらんの家庭であってほしい。

<わたなべ・ひさこ>  1948年東京生まれ。慶応大医学部卒。小児科、精神科、精神分析などを学ぶ。乳幼児・児童・思春期精神科医で、ライフデベロップセンター渡辺醫院(横浜市)の副院長を務める。日本乳幼児医学・心理学会理事。6月に世界乳児精神保健学会理事に選出された。


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