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三月のこの時期になると…
決まって「別れ」の儀式でもある卒業式がやって来る。
私は我が子の卒業式にも何度も出ているが、
ここ数年は我が子の卒業とは関係なく、
毎年卒業式に出させて頂いている。
そんな毎年出ている卒業式の中でも、
特に印象深かった卒業式について、
今日は話そうと思う。

それは今から三年前になるだろうか。
末娘の通う中学校の卒業式であった。
その卒業式では、
私はPTA会長として来賓代表の祝辞を述べるため、
招かれていた。

末娘の通う中学校は、
娘が通っていた小学校の大半の児童が通学するので、
ほとんどの保護者も生徒も私のことを知っている。
だから、玄関先で上靴に履き替えていると、
皆さん、挨拶を交わして下さったり、
お声がけして下さる。

上靴に履き替えて、校長室に向かおうとすると、
後方から「保前さん」と呼び止められた。
振り向くと…
そこには車イスに乗った女子生徒とお母さんがいた。

もちろん、顔に見覚えがある。
あちらも私だとわかったから声をかけて下さったらしい。
「あらー、いよいよ卒業なんですね。おめでとうございます。」
というと、お母さんが
「保前さん、長い間お世話になりました。小学校、中学校と本当に保前さんはいつも頑張られていて…頭が下がります。私は何もお手伝いできませんでしたが…」と。

しかし、実際には私は特別支援学級の生徒や保護者と直接関わる機会があまりなかったので何だか、気恥ずかしい感じがしていた…
すると、彼女は
「実は保前さんには一度きちんとご挨拶しなければ…と思っていました。うちのお姉ちゃんが、保前さんのところの○○君にとてもお世話になっていたのです。優しいお兄ちゃんですねー?
修学旅行の時も車イスの娘の面倒をずっとみてくれていたんですよ。
」と…
それは初耳だった。
そして何だか嬉しかった。

「また、私が障害のある二人の子を抱えて特別学級に通っていた時、玄関先に迎えに来ている私にいつも元気に笑顔で挨拶を交わして下さる保前さんに、とても励まされました。雨の日も風の日も、主人が亡くなった時も…」
そういうと彼女は涙ぐんで言葉を詰まらせた。
「そうだったんですか…」
私も何だか胸が熱くなり、もらい泣きしてしまった。

このお母さんは、
障害のある二人のお子さんを抱えて、
どんなにか大変だったろうか?
私達が普通に学校に子供たちを送り出す毎日を彼女は、毎日子供たちを車に乗せて、学校まで送り迎えをしていたのだ。
しかも、ご主人が途中でお亡くなりになっていたとは…
今まで、何にも事情を知らなくて、
ただ玄関先で挨拶を交わしていた同じ学校に通うPTAのお一人がこんな風に感じていらっしゃったとは…

側で話を聞いていた車イスの女子生徒は、
私の方を見てニコッと笑ってくれた。
「卒業、おめでとう!そして、お母さんに感謝しなくちゃね…」
そう言ってその場を別れた。

式の中でその女子生徒が車イスを押されながら壇上に上り、
卒業証書を手渡された時、涙が止まらなかった。
あれから、あの母娘にはお会いしていない。
どうしているだろうか?

卒業式…「別れ」の儀式。
そして、いつか又何処かで…の再会の約束。
「いつか又、何処かで…」

保前明美(ほうぜん・あけみ)
旭川出身。帯広市PTA連合会会長を2年、北海道PTA連合会副会長を1年務め、現在帯広市PTA連合会顧問。2016年度日本PTA全国協議会年次表彰個人の部で受賞。放課後居場所広場よんかけサポーターズクラブ代表兼コーディネーター、帯広第五中学校・緑丘小学校学校地域支援本部コーディネーターとして、学校と地域を結びつける役割をしている。社会人の長女を筆頭に1男2女の母。モットーは「和して同ぜず」。

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